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約束の海 山崎豊子

約束の海 山崎豊子

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書店でたまたま見つけた一冊だが、まさか未完成の遺作だったとは知らなかった。
山崎豊子と言えば『白い巨塔』『華麗なる一族』など長編小説が多く、好きな作家であるが、2013年9月29日に他界した事からもう新作は世に出版される事がないと思うと非常に残念である。


内容は海上自衛隊の最新鋭潜水艦「くにしお」の乗務員・花巻二尉。この「くにしお」は、1988年に遊漁船と衝突事故を起こした「なだしお」がモデルになっています。

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序盤はこの「くにしお」の普段の任務を切り取った場面を使って、潜水艦の業務や、それを取り巻く環境、そして国防の状況を上手に説明してくれます。必要な説明を上手にストーリーに載せてくる感じは、著者の真骨頂だと思います。

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 残念ながら「くにしお」が事故を起こしてしまい、相手の船に乗っていた遺族への謝罪、事情聴取、裁判等で花巻をはじめとする乗務員は疲弊していきます。他の潜水艦に移動になった乗務員もいるのですが、事故を起こした潜水艦に乗っていた乗務員はゲンが悪いと避けられがちになるとありました。このあたりはちょっと読んでいて辛いものがありました。自責の念に駆られる花巻は自衛隊を辞める覚悟をした様です。

 そんな主人公の父親は自ら多くを語らない人物ですが、真珠湾攻撃で二人乗りの特殊潜航艇に乗り、部下を喪って自分だけが捕虜として生き残ったという過去を持っており、辞任を覚悟する主人公に初めてその話を打ち明けます。またその他の先輩、上官とのやりとりから辞意を翻さなくとも期間を置くよう求められ、新たにハワイでの新鋭原子力潜水艦の乗艦という任務を与えられます。主人公は、はっきりと辞意を取り下げたわけではないものの、ハワイでの任務を前向きにとらえ、そこから新たな決断を使用と言ったところで第一部が完了します。著者が書いたのはここまで。


 第二部以降のあらすじや取材もある程度は進んでいたようで、秘書の方をはじめとする山﨑プロジェクト編集室によって説明がなされています。第二部はハワイ編で、花巻は研修先のハワイで父の戦争当時の状況を詳しく知ることになります。そして帰国し父に自衛官を続ける旨を話、「この日本の海を、二度と戦場にしてはならないのだ。」という近いとともに第二部が終了します。

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 潜水艦とかってほとんど興味がありませんでしたが、本書を読んで、国防と大きく絡んで興味津々となりました。著者も潜水艦の取材には非常に苦労されたようで、今までの作品の比ではないとありました。本書が完結しなかったのは残念でなりません。

遺作ですが、なだしお事件の真相が見え隠れする本書は潜水艦や自衛隊の事が事細かに書かれており、読んでいて感銘を受けましたが、全部完成しないで亡くなってしまった為、結末が不完全燃焼的でした。

事実も基に書かれた作品なんでしょ?

衝突はやはり、なだしお側に非があり、漁船にはなかった、、それを隠蔽しようとする体制はなかなか改善されないような気がします。

80点! 合格です
by cho34 | 2016-08-27 16:07 |


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by ジョージあき坊

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